 週に何回かこんなのが釣れる。
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トッカーノテトラという魚を、わずか三回連載するのに、半年もかかってしまいました。いくら珍しい魚だからといって、ちょっと時間がかかりすぎました。お恥ずかしい話です。
前回では、食糧を調達して、友人の漁師を頼んで目的地に向って出発したところでした。
今回は目的地に到着して、採集するのですが、この採集地で思ったことをいろいろ述べてみたいと思います。
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本種トッカーノテトラと命名された近年稀な魚を初めて採集したときは、これ
はいったい何魚だろうか、ブラックネオンによく似ているが、ネグロ川にブラ
ックネオンはいないはず、グリーンネオンならいたはずだが、これとは全く違う。
後に名前が判明したのですが、もうかなり前の出来事なのでその時の様子などは
こと細かく覚えていないです。針の先程の真っ黒い魚がいる、何だろう、程度の
意識感覚だったのです。その魚を捕まえて数匹持ち帰り、日本の熱帯魚屋さんに
送ってみた。そしたら、何しようものすごい反響があったことを覚えています。
アピストを採集に行って、アドケタというナンナカラ属の美麗種を採集したとき
も、これはナンナノカ?と思ったのです。するとこの魚の存在も東京のある業者
さんによって、その存在が数年前に確認されていた、とのことだったのです。
トッカーノテトラもその時すでにドイツから刊行されている「シクリデン アトラ
ス」という図鑑に掲載されていたのです。
その記載を知らされて、その時もドイツという国の人達は凄い、と感じました。
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その後10年ちかく経って、すでに30回以上に及ぶこの地方での採集を経験して
いるのですが、未だこの種の他の地域での採集ができていない。ということはこ
の魚が本当に僅かな狭い地域にしか生息していない、というようにしか考えられ
ないでいます。なぜそういう状況なのか、いろいろ考えているのですがなかなか
結論が出せない。
ここ数年、だれか他の業者さんが採集した、というニュースも入ってきません。
その理由として、生息地が限られている、という理由にプラスして、カラシンの
元来の性質「採集直後の5分間の管理ができないと全滅させてしまう」という理由
もあるように思います。採集者にとってはこの管理が採集いじょうに大きな問題と
筆者はいつも考えています。最初の5分をうまく元気よく維持できたらもう大丈夫
なのですが、たいていはこの5分で殺してしまうようです。
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早朝、早速採集に出発する、5馬力エンジンで軽快に出発。
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アマゾン河一般に、川幅があまりにも広いので一見して流れがあるのか、ない
のか、初めて見る目には全く表現のしようがないです。しかし船に乗ると一変
物凄い流れが上流から下流へと走っていることにきがつきます。幅1m長さ5
mほどの友人のカヌーに乗り込んで上流を目指すのですが、引いてしまった水位
に比例するように豪快な流れに5馬力のエンジンが悲鳴を上げながら一気に上
流を目指して進むわけです。いつもの慣れっこになっている状況のため、これ
が普通の様子とおもっているけれど、考えてみれば文明の利器というのは凄い
ものです。
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ネグロ川の真っ黒な水が反射して鏡になって、上下対称の景色がどこでも見られる。
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採集目的地に夜半に到着して、翌朝午前7時、壮快な気分で目が覚める。すでに
ロナルド(以下はロナと略す、インデオの友人の名前)はどこかに出かけてしま
っていて隣のハンモックはもぬけの空。暫くボーっとしていたが、台所から流れ
てくるカフェーの良い匂いにひかれてノッソリと起きあがる。あたりはすでに朝
の空気に満たされとてもさわやか、さっそく台に直行して壁にぶらさげられたコ
ップにコーヒーをついで、極端に低いインデイオ文化の椅子に地べたに座る如く
に、腰を下ろす。手にとったパンの一切れにコーヒーを浸し、すするようにたべ
る。これがとてもおいしい。カフェが終わったころ、ロナが出発の用意ができた、
といって採集道具やガソリンエンジンをとりにくる。さっそく船で30分ほどの
採集地に向ってくれるそぶりなので、気持がちょっと高揚してくる感じ。
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採集活動をしていて気がついているのだが、朝早くの採集というのはなかなか
魚が採れない。なぜか考えたが、やはり早朝は水温も低く魚自身も人間と同じ
ように、早朝は元気が出ないようだ。対して昼から午後の採集では、これが朝
と同じ場所か、と思えるような大漁があったりして、ことアピストグラマとい
う魚にはこんな事実があるようだ。しかし魚種が変わって、コリドラスでは
全く逆のようで、早朝浅瀬でウロウロしていて簡単に採れた魚が、午後は深みに行っ
てしまって全く採れない。魚によって不思議な違いがあります。
弾む気持を抑えて、正確な船の誘導で採集地のイガラッペ(小川)に到着する。
朝の光が鬱蒼とした大木の合間から差し込んで、突然の人間の侵入に驚いたのか
ギャ― ギャ― とけたたましくアララ(コンゴ―インコ)のような鳥の声が
静かな谷間のようなイガラッペ全体にこだまする。この鳴き声を聞くと「いやー
本当にまたここに採集にこれたんだ」という思いが胸いっぱいに広がってくる。
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まず川の流れに沿って、魚の観察から始める。なにしろ潅木の多い流れの小川
で、目的の魚がいる場合は、その所々にできた小さなワンドのような溜まりに
数匹から10匹くらいが小さな群れになって泳いでいるのが確認できる。この群れ
を見つけたときの喜び、というのは魚キチの至福の瞬間となるようです。
まだ朝が早いためだろうか、なかなか目的の魚の群れがみつからない。
仕方がないので、思いきって藪の中に流れを見つけて分け行ってさがすことに
する。ようやく数匹が流れにそよいで、互いがもつれ合うようなかっこうで泳い
でいるのを発見する。水が赤く透き通っているところに朝日が差し込み、その
ながれに舞っている針の先のようなサイズの魚のほんの顔の部分の赤さと、体側
にはしるメタリックブルーにしばらくのあいだ、見惚れてしまった。
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ジャングルの出口、ここから湿地帯が始まる。採集案内人とのツーショット。
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魚をおどろかせないように、静かにソ―っとその場を離れて、採集用具と
収容する袋を、場所を間違わないように目印確認してから、とりに行く。
再度確認した場所に戻って、いよいよ採集という段になるが、そうは簡単に
採れてはくれないのが魚で、戻ったときにはもうその同じ場所には居なくな
っていたりしている。皆さん、採集は難しい、こんなことの連続ではないで
しょうか。
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pH4という強酸性の川に自生するトニナという水草、水質が変わると生育が難しいようだ。
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同行してくれたロナが、このイガラッペの先に有るマンジョッカ畑の見ま
わりから帰ってきて、畑からもってきたのだろう黒い巨砲ブドウのような
房になったフルーツをもってきた。ムク―ラというそうでブドウと同じよ
うにして食べる。口の中いっぱいにぬるっとした甘さが広がって、大きな
タネの実離れもよく、とてもおいし。ジャボチカーバというおなじような
フルーツを知っているが、こちらはタネがおおきくて実離れが悪いのであ
まり好きくないが、このアマゾンのムク―ラという方のはとても美味しい。
こんな楽しみもアマゾン採集の付録としてごちそうになれる楽しみもある。
12時頃まで頑張ったが、結局20匹あまりしか採集できず、お腹がすいた
ので昼食に部落に戻ることにする。昼からの採集に期待をかけたい。
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また鬱蒼と両方から50mはありそうな大木の原始林をみあげながら、
全く流れが感じられないような、ヨドミのようなイガラッペを引き返す。
ネグロ川(黒い川)という名称の様に、本当に真っ黒なお醤油を貯めた
ような水面が、光を反射する鏡の役目を果たしてくれるので、水面に映
る景色が全て上下対象の素晴らしい構図を見せてくれる。
そんな景色にも慣れてしまって、あまり感動がなくなっているのは、バチあ
たりのような気がしています。
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程なくしてベースキャンプとさせてもらっているロナの部落の港、といっても
ごつごつの岩がせり出しただけの集落前の岩場に到着して、洗濯していたロナの
奥さんに一声かける。ご飯できてますよ、という答え、クイジの張った筆者を
ホッとさせてくれる。台所には持参したスパゲッテ―が鍋に用意されていた。
夢中で食べる、それでもロナや奥さんとその子供たちのことも考えて、こうい
うところが筆者の気配りの極みなのだが、鍋ごと全部を食べずに3分の1くらい
食べて、後はのこしてやって、ちょっと我慢する。当たり前のことなのか。
なにしろインデイオ部落というのは食べ物のない所で、年中ひもじい思いでいら
れるのにはもってこい、最近の日本の子供達に必要不可欠の条件かもしれない
と思ったりもする。空腹はもっとも美味しくたべられるソースだ、と人は言う。
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鬱蒼としたジャングルに魚を採集に入る不思議、でも何故か魚がいるのですね。
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ロード オブザ リングという映画に出てきた木の精の現物がアマゾンには存在します。。
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昼食後、しばらく消化と休養のためハンモックに寝転がって1時間程ゴロゴ
ロして、また採集に出発。明日の昼には帰途につくよていなので、これから
の午後の部は気合を入れて採集しなければいけない。 ロナの友人のパウロ
というデサナ族のインデイオ青年に手伝ってもらうことにする。
午後のイガラッペはまた景色をガラっと変えている、日差しの強さがかわる
のか、一面油を流したような、水面を色ペンキで塗ったような七色の油が浮
いているような不思議な国に入ってきたようだ。
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カヌーをまた採集地の方にむけて進み、イガラッペの入り口でこんどは一度陸
に上がり、ロナの義母(奥さんの母)の所有するマンジョッカ畑への道を歩き
でゆく。両側には水陸両用の豆科らしい大木が並び、昼でも薄暗い、例えるな
らジャングルの藪の中にトンネルを空けたような雰囲気で、ときおりはるか上
空から木漏れ日が差し込むので、けっこう明るい。大木から年中落ちる落ち葉
が重なって落ち葉のじゅうたんのフワフワをふみしめながら、それでも熱帯雨
林の気温と湿度で汗びっしょりになって、ようやく採集目的地に着く。
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採集スタッフの記念撮影。
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採集を終わって帰途につく、ネグロ川の厳しくて、それでも哀愁を帯びた夕暮れが始まる。
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突然ジャングルが終わり、明るくなった、と思ったらそこから湿地が始まった。
樹木が5mくらいの低い潅木に突然様変わりする。地べたに水がながれて、
その湿地の真中に丸木を2本括って、丸木橋のようにして人間が1人ようやく歩
けるような木道が、遥か彼方まで続いている。湿地帯の上を気楽にあるける。
荷物をその湿地帯が始まるあたりに隠して、べつに隠さなくてもこんな所には誰
も来ないのだが、一応用心のためだ。その湿地が今回の目的地のようだ。
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この湿地の潅木地帯は全て水に浸かっているようで、ぎっしり生えた雑草の
中をちょろちょろ麦茶色の清流が流れて、雑草と思われた植物がすべて観葉
植物群だったことが分かる。アナナの類やチランドッシャが潅木の枝のつい
ているし、地面からは地生蘭や羊歯の大木のようなシャシンといわれるヘゴ
椰子。流れの合間を凝視すると、流れに寄生するようにケヤリソウがぎっし
りながれにそよいでいて、白い仁丹玉のような花を咲かせている。
その流れの中を小さな魚達が右へ左へ舞っているのが見える。
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ベースになった居留地の港、川に岩盤がでて舟を接岸したり、洗濯、水浴にはもってこいの場所である。。
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今回の主役、トッカーノテトラをもう一度みてください。どこかでお目にかかれればいいですね。
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おー? こいつがそうかな、と思って小さな水槽用の手網ですくってみたら、これが
尻尾がピンクのホタルテトラ、というこれま一昔であれば超珍カラシンである、しか
し現在ではカージナルテトラに混じる、所謂マジリカラシンとして一般的な魚となった。
場所を変えて、もっと流れの緩い場所を探す。けっきょくジャングルが潅木に変わる
最初の辺りにきて、溜まりの水を覗いたら、「ウワ―!!! いるいる」足の指に入
ったトゲのような微細な大きさの魚が、数匹の群れになっていたのでした。
このような状況で、このトッカーノテトラの採集が終わりました。
2004年4月17日記述完了。
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