(679 bytes)

 


永年通いつづけているネグロ川上流、今回はサンガブリエル・カショエイラというネグロ川上流の滝の映像と、そこで採れるアピストグラマの写真を掲載します。
 


マナウスのネグロ川河畔ポンタネグラとよばれる観光地。

マナウスの上空からネグロ川に面したリゾート地域を眺める(写真クリックで拡大できます きっとサンガブリエルに行きたくなりますよ)
この景色を見ながら、30人乗りのブラジリアと呼ばれる機種の小型機は一気にサンガブリエルに向かう。
アマゾン地方も、不況の波が押し寄せていて、離島のような遠隔地への便が激減してしまった、。



機内から水位の下がったネグロ川を撮影。

当機はネグロ川に沿うように上空6000m程まで駆け上がり(機内アナウンス)ひたすら上流に向かって飛行を続ける。2時間も飛行すると川底が見える景色となって、流れの厳しさを上空からでも感じさせられる。
週に2便ある便船はこの時期、約4日の時間をかけて目的地に到着する。川底がせり出して危険なネグロ川を全力で上ってゆく。飛行機で約3時間の旅であるが、船より格段に早く到着する分、運賃は船便の約3倍もかかってしまう。
どちらを利用するかは、与えられた時間とお金であるが、魚を運ぶ場合はやはり飛行機が早いようだ。。

右の写真はネグロ川を流れる水の色、水遊びをするにしても最初は遠慮したくなる水の色であるが、何事も慣れれば大丈夫。大量の落ち葉が熱帯気温で分解してタンニンが溶け出してこんな色になるそうだ。
この写真がサンガブリエルの滝の下流から見た全景である。真中の茂みが滝の中の島となっている。


下流から見たサンガブリエルの滝全景

この流れ、滝に挑んだ多くの住民の命をさらっていった。しかしこの流れには多くの魚が集まっている。ながれに逆らってけっこう多くの漁師が魚をつっているのが確認できる。


日本的意味での滝ではなく、流れの強い浅瀬といったほうが的確かもしれない。


筆者もこの流れを数回上下に往復した経験がある。かなりのスリルがあった。ビビッタ。

この辺で、このサンガブリエルの町の紹介をしましょう。ブラジルのアマゾン河は御存知とおもいますが、その中流にマナウスという中心の町があります。人口は100万を超えたアマゾン中流最大の町です、 そのマナウスの町の前方でアマゾン河がソリモン河という本流とネグロ河とよばれる本流にも匹敵する支流にわかれます。


滝を見下ろす中心地に建設された教会のカテドラル。

本流のソリモン河はマナウス前からまっすぐ西にむかい、やがてコロンビアからペルー、ボリビア方面に向います。 しかし、ネグロ河はマナウス前を赤道に向って北上し、やがてコロンビアからベネズエラ方面に向っています。。

サンガブリエルの町は、このネグロ河をマナウスから約1000km上流に上って、あと100km足らずでコロンビア国境という ブラジル側最上流にいちしています。この地方で最も大きな町ですが、それでもせいぜい8000人がこの町の人口でしょう。日本の総面積に 匹敵するネグロ川上流地方全域面積に総勢でたった20000人が住んでるだけなのです。


カヌーでは滝を上がれないので、町にゆくためにここで係留しておく。

河ばかりで道のないアマゾン河の流域を1000km遡る、というのは大変な作業で現在でこそ小型飛行機が 就航していますが、船で上るとなると動力エンジン船で約4日はかかります。そのような秘境地帯なのです。


滝を形作る岩の割れ目にシベルスが生育していた。


ワン君が滝を散歩にきました。

ネグロ河には溯って2箇所の難所があります。このサンガブリエルの滝と、ウアウペス川という支流にイパノレの滝があって、それぞれに水上交通を遮断しています。 その2箇所ともが日本流に言う宿場町として栄えているようです。ネグロ川はこのサンガブリエルでまた2本に分かれ、本流はベネズエラに入ってオリノコ河となります。 もう一方はウアウペス川となってコロンビアに入ってゆきます。


コレクター垂涎のマト、珍種中の珍種人間

インデイオたちも時代の分からない昔、大木をくりぬいてカヌーをつくり、それに家族や家財道具道具を積んで気の遠くなるような時間をかけて この河を上がってきたのです。そしてこの2箇所の遮断滝に遭遇して、そこに宿場町を造ったようです。その後、コンキスタドールと呼ばれたヨーロッパ からの征服者が侵入してきたそうです。彼等は最初に教会を造っています。

サンパウロの我が家を出発して、赤道直下のこの町まで、乗り継ぎを確保しておけば2日の旅でこの地に到着することができます。 赤道直下というのは、年間を通して昼と夜の時間変化がなく、毎日朝6時に夜が明けて、夕方6時に日が暮れるという パターンがまったく変わらないようなところです。そういう土地に永年住んでいると、そこには時計などいらないような毎日があります。


  ネグロ川の砂浜に面した筆者の定宿ホテル。



町や環境のことばっかり言っていても始まらないので、そろそろ採集に出発することにしましょう。午前5時、まだ夜があけない湊にいって船に荷物を積み 目的地に向う。目的地といっても、いつも頼んでいる採集スタッフのインデイオの居留地近くのイガラッペ(小川)がその場所である。


  いよいよ採集地に向う早朝、武者震いがする。




川の両側の小高い土手にはインデイオが土と木と椰子の葉で綺麗な家を建てている。

川を溯ってゆく道すがら、いつも思うのだが、目的地に到着するまでにもその途中にたくさんのイガラっぺやイガポ(川の流れのない溜まり) にも沢山の未知の魚がいるのである。もうこの土地には50回ちかく通っているので、今まで何度もそれらの川に入ってみたが、時間があれば 面白いのであるが、たいていの場合SP種がいて、これの取り扱いがとても難しい。だから遠慮している、というのが実情。




採取地を目指して一気に進む。

SP種の扱いが難しい。自然保護の流れがだんだん厳しくなってきた現地の最近は、魚類学会主流の偉い先生のひしめくヨーロッパに正確な情報が入らない流れにある。 なぜか、というとインデイオ保護区が100%といえるこの地域にはアジア系のインデイオしか住んでいないので、白人は目立ってしまってなかなか採集に入れないようだ。 情報源がまったく遮断されてしまったようだ。



真っ黒な水が流れるネグロ川というのは、水面の色彩が日光の当たり具合で百変するのでとても興味深いのだが、ある意味不気味な 川でもある。その黒さも場所によって、コーヒー色になったりお醤油のようにくろくなったり、もっと真っ黒という場所もある。 右の写真などは真っ黒な水で、しかも景色がすばらしいので、通過していて楽しい。


綺麗な砂浜を通過する。



そんな素晴らしい景色を通過して、魚の採集目的地にとうちゃくする。以前にもきているので、魚がいることは確実なので気持ちは 落ち着いているのだが、やはり一刻も早く網を入れたいのが採集者の気持ちである。これから網をもって、袋を抱えて小川に入り込む。


ようやく目的地のイガラっぺ(小川)に到着する。




採集スタッフ、彼らが魚を採ってくれます。

これから採集に入ろうとしている採集助手君2人。この地方の産業など何もないので、魚を採ってマンジョッカという芋を作って、その芋からとれる粉を売って生活している。 こうして、時々やってくる筆者の小魚採りの助手をしてくれる。普段は誰も訪れる人もないので、年に一、二度私がゆくととても親切にしてくれる。




真っ黒な水を電気ウナギに注意しながら、採集する。

こんな真っ黒な水の中に、真っ赤に色付いた魚が生きていて、またこの真っ黒な水のこの近辺にしかいないという 事実に、いつもほのかな感動を覚えている。いつまでこの土地に通い続けられるか分からないが、こんな綺麗な 自然と魚に巡り合えて、この地に来られたことを一生の心の宝物にしておきたい、と思っている。



こんな流れの下にアピストという魚が隠れているので、流れをすべて大網で一気に掬い取る。 そしたら下のような収穫魚がいつも入っている。楽しい採集現場なのである。


 トニナが強い流れに耐えて、きれいな葉をだしていました。


いきなり網を入れると、このようにいろいろの魚が入ってきて、それは楽しい話だ。 ここで普通に採れる魚が、日本ではとんでもない魚なので、私も初めてこの土地を訪れたころは感動の連続だったが、 もう10年以上この土地で採集していると、ありきたりの魚に思えてしまって、こまります。 世界でここにしかいない魚なのですよね。


 網を入れたら、カラシン数匹とロートカイルが採れました。



この魚が目的の赤いエリザベサエです。

エリザベサエという名を持ったこの地方にしか生息しない魚です。雨季が近づいて繁殖期をしると♂も♀もこのように真っ赤に着飾って パートナーを探すようです。最大でも7cm程にしかならない魚ですから、狭い日本の住宅事情を考えれば40cmほどの水槽で飼育 できて、このような美しい姿を見せてくれます。



        プイラという名前の小川で採集したエリザベスさんです。但し2匹は♂です。

このような真っ赤な色彩になったエリザベサエというアピストグラマ属の、サンガブリエルにしかいない魚です。 画面、後が♀個体で前方の魚が♂個体です。♂は背鰭の3本目くらいから伸長してくるのに対し、♀個体は背鰭 が伸びない、という特徴があります。(写真を拡大すると特徴が見えます)


友達のインデイオの奥さん、採集に来る度に厄介になっています。この土地では生活のすべてが川に依存している といっても過言でない、自然の中で暮す人間の姿があります。日本を離れた世界の果てに、今現在こういう生活をしてるところがあるのですよ。


アマゾン川はどこでも。台所であり、お風呂であり、便所でもある万能の施設です。


ここの部落の子供たちです。自然の中で生活している、ということは非情に過酷な条件を潜り抜けて育ってきています。 この部落でもこの3倍の子供たちが生まれたそうですが、この大きさまで成長できたのは、この子たちだけなのですね。 淋しい話ですが、子供たちはどこでも明るいので、ホッとさせられるのがいつもです。


子供はどこでも天使です。しかし厳しいアマゾンでは、なかなか大きくなれないのが実情です。 。



サンガブリエルの砂浜から遠くクリクリアリの山を見る。

4日間にわたる過酷な採集が終わって、サンガブリエルに帰ってくる。この砂浜の景色を見るとホッとします。 はるか川下の方にクリクリアリ山が見えます。この山の麓にも友人のインデイオが数家族生活しています。 それを思い出す、とても寂しい思いになります。みんな 頑張ってくれよー 元気でいてくれよー と思ってみています。



今回もネグロ川は私に微笑んでくれました。ありがとう。

翌朝、荷物をまとめて帰途につく。また3時間小型飛行機で飛んでマナウスに出て、それからまた大型ジェットに3時間で 大都会のサンパウロに帰ってゆく。こんな環境の違いを毎月繰り返していると、とても寂しい思いがしてきます。 しかし日本はまだ地球の裏側、こちらも別世界があります。ここ17年こんな環境の違いを通過してきました。     2005年3月12日記述完了。

  

  


(C) 2001-2005 - Japan Aquarium. All Rights Reserved.
写真転載禁止